こんにちは。和雨です。
最近また仕事が忙しくなり、全然読書できてませんでした……。
読書できない日が続くと心が荒んできますね。。
やっぱり本を読むって必要な事です、生活と心に余裕が生まれます。
久しぶりの更新になりましたが、今回読んだ本は湊かなえさんの『絶唱』です。
この本について、自分の感想を書くことは凄く難しいなと感じました。
なぜなら、この本は阪神淡路大震災を体験した人達の話。
震災についてを小説として書くことの理由、意味・意義について安易に言葉できなかったからです。
とはいえ、あくまでこのブログは「私が私の感想を書く場」ですので、僭越ながら感想をまとめます。
あらすじ・概要
まずはこの本のあらすじ・概要から。
この本は複数の短編からなっている本です。
それぞれっを解説すると最悪なネタばれになるので、とりあえず出版社の紹介文から引用します!
心を取り戻すために、約束を果たすために、逃げ出すために。忘れられないあの日のために。別れを受け止めるために――。「死」に打ちのめされ、自分を見失いかけていた。そんな彼女たちが秘密を抱えたまま辿りついた場所は、太平洋に浮かぶ島。そこで生まれたそれぞれの「希望」のかたちとは? “喪失”から、物語は生まれる――。
新潮社: https://www.shinchosha.co.jp/book/332913/ より引用
この本は阪神淡路大震災から20年の節目に書かれています。
内容としては、阪神淡路大震災をキャラクタ達が、直接または間接的に関わりのあったトンガでその傷と向き合っていき、再び人生を歩みなおすというもの。
いつものイヤミス小説とは違う、著者の想いが強く出ていると感じる作品です。
(恐らく)実体験をもとに書かれている
この本は「実体験をもとに書かれた小説」と言われているようです。
湊かなえさんご自身が阪神淡路大震災を経験したという話はネット上では見つかりませんでしたが、この物語に出てくる主人公達のプロフィールがかなり著者自身の経歴と重なっています。
そのため、きっと自分の経験をもとに書いているのだろう、というのが多くの読者の認識です。
湊かなえさんは関西出身で海外青年協力隊でトンガに居たり、家庭科の先生をしていたりと、登場人物の経歴と重なっています。
だからこそこんな小説が書けたんだなと思いますし、何より経験していない人がおいそれと書けるテーマではないですよね。
このようなセンシティブなテーマを震災20年の節目に書くのですから、それだけこの本には著者の強い想いが詰まっているように感じられます。
特に最後の章『絶唱』に関しては主人公が小説家で、自らの過去を独白するという形で書かれていて、作者の個人的な気持ちが濃密に描かれているように感じられました。
感想
この本の最後の一文に重みを感じる
「尚美さん、もうすぐあの震災から二〇年です。」
最後に書かれている一文はこれです。
この本をまだ読んでいない人にとってはただ事実を述べただけに見えますが、この本を最初から読んだ人にとっては、とても重みのある一文だと感じられます。
これ以外にこの本の終わり方は無い。
私はそう思いました。
震災によってその時失ったものだけでなく、その後の人生あらゆるものが乗っかった、そんな言葉です。
なぜ震災についての「小説」を書いたのだろう
ここはやはり本人にしか分かりませんが、意味や意義を見いだす事なら誰にでもできます。
著者は小説家なので小説で書いたと言えば簡単だけど、筆を執る人であればフィクションとしてでなくても本は書けたはずです。
それなのに、なぜ小説として書いたのでしょう。
もし著者が本当に震災を経験したのであれば、安直な考えで書いた訳ではないと思います。
事実を述べるのと、フィクションとして書くのと。その違いは何なんでしょう?
私は、事実としての本は知るために、小説は感じるために書かれるのだと思っています。
実際の人の言葉だと語る側にも事情と主観があり、そして聞く人にも語る人との関係性があります。
さらに言えば第三者的視点で受け取る事になります。
それに対して小説は、主人公達に視点を合わせて主観に近い形でその出来事を捉え考える事ができる。
私はここにこそ震災を小説で書いた事の意義があると感じられました。
あなたはこの本を読んでどう感じるでしょうか?
震災を体験していない方にとっては被災者の方々の気持ちは一部とも分からないかも知れません(私も体験していない人の一人です)
ですが、この本は震災について、被災者の方々について考えてみる機会を与えてくれます。
自然災害が頻発する今日この頃。この本は災害に遭っていない人の価値観を変えてくれるかも知れません。
内容とは関係無いけど……
最後にどうしても主張したい!!
文庫版に着いていた帯、あれには納得いかない。
稼ぎたい下心しか感じられない!
読み終わって余韻に浸りながら帯見直した時、正直イラっときた。
みなさんは私の二の舞を演じる事の無いよう気をつけてくださいね……
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。