雄弁。素晴らしい事ですね。
私には無い能力です。すごく羨ましい。。
『沈黙は金。雄弁は銀。』なんてことわざがありますが、
沈黙の後、しかるべき所で雄弁を振るう力が無ければ、それはただの受け身です。
いつも面倒臭くなって受け身になりがちな私には難しい課題ですよ。。
今回読んだ小説は、スピーチやディベートの力をつけ主義主張を前面に出せる人材を育成する事最大の力を注ぐ、
“雄弁学園”の教壇に立つ教師たちの物語
『パラドックス実践 雄弁学園の教師たち/門井 慶喜 (講談社)』です。
概要
あらすじ
物語の舞台は雄弁学園。
この雄弁学園は、国語や数学などの一般的に受ける”法定科目”と
論理学など雄弁の力をつける為の授業”雄弁科目“という二種類を柱とした歴史ある学校。
小中高大一貫で、各学年1クラスの超少数精鋭。
もちろん皆優秀。しかも勉強への意欲もバッチリで一見素敵なエリート校なのです。
しかし、教師にとってはしんどい職場。
何せ生徒は小学校からずっと議論する事に長けており、
教師には優秀な生徒達を論破できる程の更なる雄弁を求められるからです!
本作はそんな学校で苦労しながらも先生をやっている人たちのお話です。
通勤時間中に読むのにぴったりだった
全体の構成としては、
各学区(小、中、高、大)それぞれの先生達の4部作。
各章さらさらっと読めるので、通勤時間にぴったりといった印象でした。
感想
愉快な言論対決の話ではなく、言葉によって壁を乗り越える話。
最初は「詭弁」を重ねて生徒達を論破していく痛快なストーリーかなと思っていたのですが、全然違います。
あくまで先生達が自分たちの壁を乗り越える話、といったものです。
それぞれの先生が抱える問題はそれぞれ。
生徒から試すとばかりに難題を押し付けられたり、
発表会で生徒が嘘の参考資料を述べたり、
学校の最前線から外され、自信とやる気を失くしてしまっていたり、
生徒に打ちのめされて学校へ来られなくなったり。
それでも思考を重ね結論を導き解決していくのです。
つまりこれはお仕事小説だ。と私は結論づけました。
結局雄弁に必要なのは「沈黙」ではないだろうか。
正直、詭弁だと思う箇所もありますし、「そんな風に思考を展開するのは無理があるだろ」って思う部分はちょこちょこありました。
そしてそれによる若干の置いてけぼり感…
でも、相手の発言について一つ一つ「なぜだろう?」と考える姿勢を持ち議論を重ね、結論を導くという過程に大きな価値があるのだと思いました。
雄弁の為に必要なのは、相手の考えや意図についてよくよく考える事。
つまり「沈黙の時間にこそあるのだ!
つまるところ、やはり『沈黙は金』ですね!