『すべてがFになる|森博嗣』あらすじと感想

今回読んだ本は、森博嗣さんの『すべてがFになる』です。

今回読んだと言っても以前読んでいて別サービスに感想をまとめていたのですが、それをこのブログに書き直した次第です。

森博嗣作品は文字多く分厚いですが、堅苦しいという訳でもなく「夢中になって読んでたらもう結末を迎えてしまった」となってしまうんですよね!

複数のシリーズ作品があるので、これからも読み進めていきたいと思います。

あらすじ・本の概要

まずはあらすじ。

孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季(まがたしき)。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平(さいかわそうへい)と女子学生・西之園萌絵(にしのそのもえ)が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。

Amazonより引用

このシリーズはS&M(犀川&萌絵)シリーズと呼ばれています。

作者の構想では4作目との事らしいですが、大人の事情でこのすごい作品を第1作目にしようという事になったようですね。

シリーズの先頭バッターに持ってくるだけあって、この作品は本当に面白いです…!!

まずキャラクター。

犀川先生は工学助教授で、すごく理系脳な人です。
物事をシステマティックに考え、徹底した客観視を持つ人。

対して萌絵は、世間知らずな箱入りのお嬢様。でも頭の回転は天才的。
そして犀川先生に恋心を持っている。

ライトノベルのような設定ですね。アニメ化されるのも納得です。

そして今作の重要人物である四季博士は、正真正銘の天才。

小さい頃から天才的な能力が認められていて、彼女がいる研究所ではすべての仕事の中心に立っている。
相手の話の先読みだって人を意のままに操る事だってお手の物。

しかし四季はその研究所に閉じ込められています。

なぜなら彼女は両親を殺した疑いで逮捕された経歴を持っているため。
(心神耗弱と多重人格で罪には問われていません)

そんな特殊な研究所に、犀川と萌絵はやってきます。
二人ではなくゼミでだよ。

そこで二人は研究所を見学しているときに、四季のいる部屋の扉が突然開かれます。 そこには自走ロボットに取り付けられた死体。

四季は閉じ込められているため、侵入経路はその扉以外ありえない。

しかし扉には特別誰も出入りした記録が残っていなかった。

つまり、そこでは密室殺人が行われていた。

というお話です。

なお、本作は講談社の第一回メフィスト賞を受賞した作品です。

感想

理系には共感できる点が多数。文系は参考にして!

この本の著者である森博嗣さんは工学博士で、名古屋大学の元助教授というゴリゴリの理系人です。

そして主人公である犀川も工学助教授。

これはもう著者さんの価値観が出ているキャラクタなんでしょうね!

というだけあって、犀川の価値観は理系なら共感しちゃうような点が多いんですよね。

これに対して萌絵は先生に恋するお嬢様。このコントラストが重厚なミステリーの緊張感を上手く緩めてくれる魅力があります。

理系の考えることが知りたいという方は、一度森博嗣作品を読んでいただきたいものですね!

頭が良すぎて理解できない

主人公の二人はものすごく頭が良いです。

萌絵も実は頭脳で言うと犀川以上のものを持っている設定です。

そして著者の森博嗣さん、この人も普通の人にはわからないレベルの頭脳を持っています。

▼詳しくはこれ見ればわかります▼

だからなのか正直凡人には理解できない部分がね、少しあるんですよ……。

シャーロックホームズを読んでも同じ気持ちになるんですが、さも当たり前のようにさらっと書かれるからちょっとびっくりするんですよね。笑

「理系ってこんな感じなの?」とかいう誤解が生まれないことを祈ります。

シリーズ全体で楽しみたい

S&Mシリーズは完全に独立した作品ではなく、作品毎の時間経過がしっかりあるシリーズになっています。

シリーズが進むにつれてキャラクターの成長や関係性の変化など、全部読んでいるからこそ楽しめる要素があります。

過去の作品を読んだからこそ分かる部分って、なんというか優越感がありますよね。

つい人に語りたくなるシリーズですね!

読んだ人向けの感想※ネタバレ注意

ここからはネタバレになるから読み終わった人だけ読んで欲しい。

犯人がわかるネタバレなので!

「すべてがFになる」の解説

四季博士は自らを閉じ込めている研究所の総合管理を行うシステムを開発し、その際にあらかじめ脱出の為のプログラムを仕込みます。

そのプログラムが実行されるタイミングがint型の値がFFFFとなる時、すなわち『すべてがFになる』ときだった訳ですね。タイトルおしゃれ。

でもこの辺りがプログラミングがわからないという人にとって疑問符が浮かぶという意見をよく見かけたので、現役エンジニアである私が簡単に解説します。

実際にものすごくシンプルにプログラムを書くとしたら、こんな感じ。

int cnt; 

if(cnt == 65535) 
{
    //以下のプログラムを実行する処理を実行
    //ドアを開く
    //記録媒体の時刻をずらす
    //メールを送信不可にする
}

説明すると、まずintというのは整数のことです。

“int cnt”というのは整数の値が入る、”cnt”という名前の箱だと思ってください。

ここに数字が入る(代入されると言います)ことによって、経過時間をカウントできます。

そしてすべてがFになるというのは、この整数型の値がFFFFになるということ。

「整数がFFFFってどういうこと?」って思う方もいるかと思いますが、これは16進数という数字の一桁を1~Fで表すものです。

0~9はそのままで、10~15をA~Fの計16個で書き表します。

これは機械が数字を処理する時の表現方法でもあり、プログラミングにおいては割と常識的な表現です。

話は戻って「すべてがFになる」とは、この16進数4桁の値が”FFFF”になるということですね。

実際の整数で言うと65,535です。

例で書いたif(cnt == 65535)というのは、 経過時間のカウントが全てFになったとき、次の括弧でくくられた処理(扉を開けたりなど)を実行するということです。

私が登録している『読書メーター』というサービスで、”if文とかint型とかが分からない”っていう意見が見られたので簡単に解説してみました。

エンジニアから見たら「すべてがFになる」って聞くとまず16進数が浮かびますし、それに関連する数値処理の問題とかを想像してしまいます。笑

動機・気持ちがわからない

さて、私はここで疑問を感じました。

なぜすべてをFにする必要があったのか、という点。

上記のプログラムを見て何となく察してもらえると思いますが、値は65535なんて綺麗な数字じゃなくて、もっと自分にとって楽に実行できるような数値にしてもよかったのではないでしょうか。

みんなにシステムに問題がないと思わせるのに時間をかけるにしたって、子供が育つのを待つにしたって、FFFFにしなくても良いのではないかな、と。

ほら、深夜3時とかに実行させれば目撃者も少なくなりますし。

これについて考えると、四季博士はやっぱり自分の頭脳を使って脱出する事に、ゲームとしての感覚があったのでしょうか。

それともゲーム感覚?

子供(ある程度仕方ないかも知れないですが)や所長を殺したのはどういう気持ちだったんでしょうか。

まず真犯人である四季博士は少女時代に両親を殺した容疑で逮捕されましたが、実際には殺してないんですよね。

ナイフを用意したけど、実際には殺せず、所長が四季の手を取って殺人を実行してます。

四季少女は、自分の意思で両親を殺せなかったんです。

両親を殺せなかった人が、我が子と恋人(殺した時点ではもうそんな気持ちは無い?)を不必要に殺せたのでしょうか?

脱出することだけが目的なら、二人も殺す必要はないなと。

しかもちょくちょく犀川に接触を図るあたり、ゲーム感覚もあったのでしょうか。

両親を殺せないまっとうな人間だったのに、ゲーム感覚で二人を殺すという心理が考えさせられる部分です。

肉親がいなくならないと解放されないという気持ちだった、というのも考えられますね。

「もっと読み込め、ここに書いてあるぞ」って意見があれば是非お聞きしたいですし、あなたがどう思ったのか聞いてみたいです。

私の考えはこんな感じ。

考えられる事その1:やっぱり四季博士には恨み(という感情・考え方)があった。

自分を身籠らせ両親を殺し、自分に罪を着せて自分を監禁する新藤所長。普通に考えたら恨みますね。笑

そしてそのきっかけになった我が子に思う所もあったのかもしれない。

そう考えたら犯行には納得がいく。小説のお約束で、無くてはならない”動機”として成立します。

でもこれは正直考えにくい。

なぜなら四季博士のキャラクターを強調して、そういう考え方をしない人物という表現を徹底しているからです。

両親を死なせた事も合理的だというニュアンスの発言もありましたしね。

考えられる事その2:自分の計画をねじ曲げられなかった。

四季が最初にたてた計画は、我が子が自分を殺して脱出するというもの。

四季博士は天才です。きっと自分が考えた事をすべて実現してきた事でしょう。

計画倒れや妥協という選択肢を持っていなかったのではないでしょうか?

自分と子供で役割を入れ替えた時点で、自分で実行するならもっと完璧にできる。計画を更に昇華させようという考えで所長も殺したとか。

天才の考える事は凡人には理解できないという表現もあるし、そういう考えもありかなと思いました。

理論の証明。これは理系にとっての快感でしょうから。工学的にはどうか知らんけど。

こうやって今は謎を謎のまま残しておけるという点は、シリーズものの魅力でもありますよね。

続編でわかることがあるのか。それとも別シリーズにあたる「四季シリーズ」でわかるのでしょうか。

いずれにしろ次を手に取らないわけにはいかなくなりました。

これからの作品も楽しみです。